みなさんこんにちは!現役医学生のたそがれです。
今日は解剖実習はなにをしてどのような流れで進めていくのか、実際に解剖実習をやってみて感じた感想について紹介していこうと思います。
医療系の学部を志望している方やこれから解剖実習を控えている医学生や看護学生の方は参考にしてくれると嬉しいです!
では、いってみましょ〜!
解剖実習ってなに?
解剖実習はご献体といって、生前、医学教育のため解剖に同意していただいた方のご遺体を解剖することによって、全身の臓器や筋肉、血管、神経などの解剖構造について学ぶ実習です。
解剖実習は医学部、歯学部、看護学部などの医療系の学部で行われています。
実際に学生が解剖に参加するのは医学部と歯学部のみで、看護学部などその他の医療系の学部では医学生や解剖学の先生の解剖を見学したり、解剖された臓器などを手で触ったりして実習します。
解剖実習は単なる解剖学の勉強に過ぎず、将来医療従事者になる者としてのイニシエーション的なところもあると思います。
解剖実習の具体的な流れは?
医学部の解剖実習では4、5人のグループごとに1つのご献体を解剖していきます。解剖実習は主に2年生で行われることが多く、3ヶ月〜半年といった長い期間をかけて丁寧に少しづつ解剖を進めていきます。
基本的には「解剖実習の手引き」という本に沿って解剖を進めていきます。
最初は、皮膚を切開し、筋肉を同定し、血管や神経を剖出していきます。
「剖出」とは、ある種の発掘作業の様なもので、筋肉や神経、血管などを傷つけないようにそれらを覆っている結合組織や脂肪組織を取り除いていくことです。
「剖出」を行うことによって、筋肉がどこから始まりどこで終わるのか(これを起始・停止といいます)、血管、神経がどのように走行してどこに分布しているのかなどを身をもって体験することができます。
「剖出」の中で一番の山場は腕神経叢の剖出です。

解剖図では神経は黄色で描かれることが多いのですが、上の図の首に広がっている神経の集まりが腕神経叢です。「腕神経叢」は「わんしんけいそう」と読み、「叢」は草むらという意味です。
まるで草むらの様に神経が生い茂っているのです。
この「草むら」をかき分ける様にして丁寧に脂肪組織などを剥がしていくのが「剖出」です。
腕神経叢の解剖構造は重要でテストにも頻出のところなので6年生になった今でもよく覚えています。
解剖も中盤に進んできて徐々に慣れてくると、今度は臓器を剖出していきます。それぞれの臓器がどこにあるか?どのような構造をしているのか?どんな役割をしているか?などを逐一勉強しながら進めていきます。
例えば、胃も小腸も大腸も腎臓もお腹の中にあると思われがちですが、実は微妙に違います。胃や小腸、大腸は腹膜という膜の中にある「腹腔内臓器」であるのに対して、腎臓は腹膜の外にある「後腹膜臓器」です。
解剖実習ではよくスケッチが課題になります。実際に解剖したご献体を見ながら、正確にスケッチして解剖構造名を書き入れていきます。スケッチは自分の知識を整理する良い機会ではあるのですが、なんせ時間がかかり、平気で書き直しをさせる先生もいるので私は嫌いでした笑
解剖実習も終盤に差し掛かってくると脳解剖が始まります。
脳解剖はその名の通り脳を解剖を解剖していきます。頭蓋骨を開けて脳を取り出したときはその美しさに感動しました。脳は神経細胞の集まりで、白質という白い部分と、灰白質という灰色の部分に分かれています。灰白質には細胞本体が集まっていて、白質は細胞から出たファイバーの集まりです。
脳解剖では、脳がどの様な経路で体に指令を送り、また、どの様な経路で体からの情報を受け取っているのかを学びます。
解剖実習の大変なところは?
解剖実習は医師となる上で必須の実習であり、解剖学の勉強にも不可欠ですが、やはり辛い実習でもあります。どんなことがしんどいのか具体的に見ていきましょう!
体力が結構削られる
解剖は座りながらだと手が届かないことが多いため、基本的に立ってすることが多いです。長時間立っているとどうしても疲れてきます。解剖実習がある期間は一日中解剖なので、朝登校してからお昼休みまで立って解剖、お昼を食べた後もその日のノルマが終わるまで立って解剖してたまにスケッチなどのときは座れるといった感じです。
また、骨の切断など、力仕事も結構あるので思っていた以上に疲れると思います。
精神的な緊張感・ストレスがある
これは特に解剖実習の最初の方に感じたことですが、亡くなった方とはいえ、人間の生身にメスを入れて体の中を覗くことはとても緊張というか、禁忌を犯している様な感覚さえ覚えました。解剖実習初日の日には気分が悪くなって退室した同級生もいたほどでした。途中からは良くも悪くも慣れてきて何も感じなくなりましたが、今となっては何も感じなくなるのも恐ろしいことだと思います。
独特の匂いがする
これは解剖実習あるあるだと思うのですが、解剖はやはり匂いがきついです。これはご献体そのものの匂いというよりは、ホルマリンの匂いです。ご献体は腐敗しないようにホルマリン液に浸して保管されているのですが、ホルマリンは結構な刺激臭がします。人によってホルマリンに対する耐性は差があるようで、弱い人は防毒マスクをして実習に参加していました。私は特段弱い方ではありませんでしたが、それでもよく目が痛くなったりしました。ホルマリンの匂いは服や髪にも着くので、家に帰ったらまずシャワーを浴びて洗い流していました。
解剖実習の感想
解剖実習は深く記憶に刻まれている医学生も多いと思います。ここでは私の解剖実習の感想を紹介したいと思います!
最初の解剖実習でご献体にメスを入れたときのことは今でも鮮明に覚えています。
おそらく今後も一生忘れることがないと思います。ご献体の方の顔を見るとヘンなことはできないと実習中も常に気が引き締まりました。
解剖学は机上の学問ではなく、解剖実習を通して実際の解剖構造を見ることで理解が深まり完成する学問だと感じました。しかし、解剖実習を通して学んだことは解剖学だけではなくむしろ精神面の方が大きいかもしれません。
人の体にメスを入れることは普通の人には許されていません。将来医師になる覚悟がこの解剖実習で決まりました。また、解剖を通して人間の生の尊厳を守ることの大切さを感じました。
ご献体の方は名前もどの様な人生を送ったかもわかりませんが、解剖実習が終わるときはご献体の方の顔をみて物悲しさを感じ、自分の不十分な実習をいつも見守っていてくれたことへの感謝の気持ちが溢れてきました。
この記事の最初の方にも触れましたが、解剖実習は医師になるための一つの通過儀礼、イニシエーションだと思っています。ご献体の方に恥じないような医師になろうと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか?解剖実習というテーマはその性質上、なかなかインターネット上に載せることが憚られるテーマでもありますが、医学部を語る上で切っても切り離せないものなので最大限の敬意と配慮を持って今回の記事を作成しました。
みなさんの参考になったら幸いです!
ではまた次の記事でお会いしましょう〜!
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